国税庁が6月から開始予定の公売オークションについて、著作権法違反の疑いがあることが報道されています。
国税庁では、公売の対象となる差し押さえ財産について、その写真を同庁の「公売情報ホームページ」および「ヤフー官公庁オークションサイト」で公開しています。公売に参加する人はその写真などを見て、公売に参加するかどうか、またどのくらいの価額で入札するかを決めるわけです。
ところが、差し押さえ品の中には絵画など著作権で保護されるものもあります。ホームページを利用して著作物を公衆に公開する行為のことを「公衆送信」といい、公衆送信を行うためには権利者の承諾が必要です。今回、国税庁が写真を公開した差し押さえ財産の中には、洋画家の故山本彪一氏や故東郷青児氏など著作権で保護されている絵画が数十点ありましたが、国税庁では権利者の許諾を得ていませんでした。そこで、文化庁が「著作権法違反の疑いがある」と指摘したということです。
確かにインターネットにおいて、著作権や肖像権、意匠権、商標権などは守られにくい状況にあります。スキャナなどを使えば簡単にデータを複製し、また誰もが簡単に公開できてしまうデジタルな世界では、それらを守るべき敷居が著しく低くなります。それに加えて新しい文化であるインターネットでは、参加する人々の意識やモラルもまだまだ高いとはいえません。しかし、だからこそ著作権等保護のための法令整備やさまざまな仕組みづくりなどは着実に進んできており、ここ数年でインターネットの無法ぶりはかなり改善されているように見えます。
国税庁は、「権利者に具体的不利益をもたらすとは考えにくい」「斜めから撮影するなど作品そのままの構図ではない」ため、「許諾を取る必要はない」と主張しているようですが、少し苦しい主張かもしれません。
(情報提供元:ゆりかご倶楽部)
- by ishiguro-kaikei
- on 2007-05-31